篠山盆地の北の多紀連山は1000mにも満たない山々であるが、日本海と瀬戸内との分水嶺になっている。岩稜の続く道は修験者の道場として栄え、近年では多紀アルプスとして多くの登山者に親しまれている。山の案内に書かれてある。

小金が岳(こがねがたけ)725mは主峰三岳(みたけ)793mのすぐ東に位置する。
 植林された杉山の薄暗い谷を抜けて尾根へ出る、急登の階段場を終えると、669m独標に着く。ここからアルペンムードのある「蟻の戸渡り」といわれる岩稜となる。おおむね岩の南側を巻いているが、北側は深く切れ落ちているだけに特に注意がいるところである。

瘠せ尾根を挟んで目の前に目標の小金ガ岳(こがねがたけ)が見える。
山頂は白いガスに被われていた。
この場に立ち、今又、不安とも緊張ともつかない心細さがこみ上げてくる。

今日は雪辱戦、岩山に慣れない者がリベンジである。
(わず)かの所で登頂を断念した前回を思うと複雑な心境である。

 明るく弾んだ男女数名の話し声が前方より聞こえてくる、山頂からの下山のようで姿は見えない、声の方向からして複雑な地形を通過しているところだと思われるのに、弾んだ声でペチャクチャとよく話ができるものだと感心した。
この先はクサリ場が23有り、人と行き交うのは避けたいので待ちながら食事をとることにした。

これから先を思うと食べられる所で食べておきたい、話し声は近づいては来るが時間はかかるはずである。


おにぎりをひとつ食べ終る頃、話し声の人達が現れた、同じくらいの年恰好の男女。

「こんにちは、どうでしたか?」
ルートの様子でも聞きたかったのだが
「ガスで何も見えなくて残念でしたわ、展望を楽しみにしていたのに、」
違う答えが帰ってきた、

女性は続けて
「でも、日陰(ひかげ)ツツジが綺麗かった!初めて見ました。」
「どのあたりで咲いていました?」
「あちこちで!すぐわかります!」
満足そうな明るい声である。
 
「お気をつけて、」・・・
 
さあー、僕らも行こう・・・
 


99.4.26 リベンジに燃えて  池田秀信



霞む小金ガ岳
タチツボスミレ
シハイスミレ
小金ガ岳山頂直下

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