眼下の船

 徳島県・日和佐町、海亀が産卵に来る大浜海岸は有名。
千羽海岸は断崖絶壁が続く、浜に降りる脇道で何かを食べている野生の猿を見た。海中には南国の熱帯魚が見られ,チョピリ楽園が残っていた。

 漁火の森と名の付いた、小高い崖に立っていた、眼下に湾が見下ろせる。高知県に近い徳島、太平洋に面した海岸線より細長く入り江が湾の奥へ続く、海の色は青々と夏色に輝いていた。

 眼下に白い小舟が見える、漁師の舟らしい。
海は透明度が良く底が透けて見える、船は止まっていた、男が一人、頭はバリカンで短く刈り込んでいる、日に焼けた背中を見せて立っていた、遠くを見つめしばらくは動かなかった。

男が衣服を身に着けていないことにしばらくして気付いた。
遠目にも男の白いお尻が判別できる、日が高くいばかりに輝く海上に全裸でんでいた、手にはウエットスーツのズボンを持っている、おもむろに男はこちらに振り向いてまた背を向けた。


 そのとき、太陽に照らされて男の股間に黒く光るものが目に入った。
男は日常的な動作でウエットスーツを海水に
して、素肌の上から穿いた。

 風はいで夏の日差しを受けてコバルト色に輝く海上には、
南の国のゆったりとした時間が流れていた。




眼下の船 池田秀信
2000.8.22 徳島県・海部町漁火の森より眼下の那佐湾をみて

HOME